第7話

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「……すごい!成宮、点数入れたよ?ほんとにうまいんだね」 美妃がグランドではしゃいだ声を上げた。 花菜は複雑な思いで頷く。 カッコいいのは確かで、心が踊るのと同時に、今校内にいるであろう佐倉直人が気になっていた。 早智は試合を見ないで永島クンと店をまわる事にしたようだ。 永島クンと他の彼らは別行動らしいが、合流した時の事を考えて、気を遣ってくれたのかもしれない。 会うつもりはなかったし、もし会ってしまっても、向こうは知らない可能性が高い為、知らないふりをするつもりだった。 成宮充はグランドを汗だくで走っており、素人の目から見ても明らかに活躍していた。 女子の声援もちらほらと聞かれるし、普通であれば余り関わらないタイプだと実感する。 ユニフォームで汗を拭う姿までいちいち絵になって、ちらりと見える腹筋にどきりとする。 「あ、向こうのチーム。小池先輩に交代だ」 花菜の顔が強張る。 相手チームのベンチに目をやる。 一度小池先輩を見つけた後は、意識して目を向けないようにしていた。 記憶にある先輩よりも、がっしりしていた。サッカー部で鍛えているからだろうか。 だが、先輩を見ても嫌な気分はするものの、昔のような緊張した感覚はなかった。 きっと、もう好きではないからだ。 もしかしたら、会っても普通に話せるかもしれない。 ぼーっと小池先輩を見ていたせいか、先輩がこちらを見る。 ふと目が合う。 先輩は、困ったように微笑んで、手を振った。 花菜は一瞬迷うが、お辞儀をする。 美妃は意外だという顔を向ける。 「へーき?」 「うん、自分でも意外なぐらい。というか、佐倉クンの方が気になって……」 「……確かに。ちょっとヘビーな話だよね。まさに今、異母姉弟が同じ校内にいるんだもんね」 美妃は苦笑いする。 「でもさ、先輩見ても平気なのは、やっぱり好きな人が出来たからじゃない?」 にやつく美妃に、花菜は照れ臭くなる。 「……そうかもしれないけど」
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