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先輩を見てもどきどきしない。
今なら意識しないで話せるような気がする。
「やっぱり、前の恋を忘れるには新しい恋なんだねー」
美妃はしみじみ言う。
「あ、小池先輩もやっぱうまいね」
軽快なドリブルをする先輩を見て、ごまかすように言う。
「中学の時は部長だったもんね」
「後半もあとどれくらい?今んとこウチが勝ってるよね」
花菜はケータイの時計で確認しようとケータイを開いた。
「あと……20分?早智からメールだ」
「なんだって?」
「……永島クンが、試合見に来るって。他の人も一緒に」
「まじで?!どうする?」
「うん、早いけど、もうクラスの方に行こうかな。このメール、来たのけっこう前……」
「あれー?美妃ちゃんと花菜ちゃんだ!」
永島君の声が響く。
どうして早めに気付かなかったんだろう。
見ると、男子4人と早智がこちらに向かって歩いており、早智がその後ろで申し訳ない顔をしている。
自然と佐倉直人の方に目線がいく。
あの子だ。
もちろん成長しているが、あの頃のままだ。
他の男子と話ながら試合に目をやり、時々笑う。
悲しげな、暗い表情を思い出す。
笑った顔は知らない。葬儀でしか顔を見ていないから。
「えっと、早智の友達の美妃ちゃんと花菜ちゃん」
永島君が指差しながら他の男子に紹介する。
名字言わないんだ。永島君がアバウトな人でよかった。
花菜は当たり障りなく挨拶する。
「こっちが山田で、あと阿部。で、こいつが佐倉。こいつだけ年下なんだ。多分、この高校の後輩になるからよろしくな」
若干ふくよかで社交的な彼が山田君。メガネで頭の良さそうな彼が阿部君らしい。
「みんな、かわいいね。俺ら普段男だらけだからさ、女の子いるだけで雰囲気違うよな」
山田君が笑顔をつくる。
女の子を紹介してほしいというのは、彼に違いない。
佐倉直人が苦笑する。
「先輩、がっつきすぎですよ」
どこか余裕を感じるのは、大人びた雰囲気のせいだろうか。
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