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試合はウチの勝ちで終わった。
成宮充は最後までは出ず、田口と交代した。招待試合ということもあり、1年生にも試合に出る機会が設けられたようだ。
試合を見ていた人達が校内に流れていくのを見て、花菜は早智と永島君を交互に見る。
「あ、私もうクラスの方に行くね。クラスの当番もあるし。永島クン達も、学祭楽しんでいってね」
「私も行くね。当番一緒だし」
美妃が言うと、山田君がはにかむ。
「ありがとう。美妃ちゃん達のクラスも見に行くね」
阿部君が「どーも」と頭を下げた。
佐倉直人をちらりと見ると、黙って花菜を見ていた。
あまり喋る方ではないようだし、ただ無愛想なのだろうと考える。
「ねえ、成宮に声かけに行く?」
花菜はグランドに目をやる。
チームメイトと談笑しており、中には相手校の生徒もいた。
「……話しかけられないよね」
「だね」
美妃と校内に向かおうとして、グランドの人だかりから小池先輩が走って来た。
「花菜!」
「……先輩」
「この学校だったんだな」
首にかけたタオルで額を拭い、微笑む。
「……はい」
「花菜、先に行ってるね?少し遅れてきてもいいからね。話した方がいいかもしれないし」
美妃が耳打ちする。
花菜は頷いて先輩を見た。
「……元気だったか?」
「はい」
小池先輩が吹き出す。
「はいだけかよ。……てか、当然か。俺ら、何となく気まずくなっちゃったもんな」
小池先輩は力なく笑った。
「……先輩」
「ん?」
「私、いきなり先輩を避けちゃってたでしょ?」
「……うん」
「あの時、生徒会室で、他の女の子と話してるの聞いちゃって」
「……あー」
「ちょっかいかけただけだって。だから、ショックで……」
先輩は、タオルで顔を覆う。
「……そっか、ごめんな」
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