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「 ありがとう、啓ちゃん 」
アンタはやっぱり優しい男だよ、と涙ぐむ。
「 あの男とは大違い。啓ちゃんの方が好きっていう読者様の方が、案外多かったりしてね 」
まさか、と啓輔が戸惑ったように笑った。
「 慎ちゃんには敵いませんよ。あの人は、優しさを上手く表現出来ないだけなんです。
スズコさんが一番良くご存知でしょう?」
私は、答える代わりに小さく口の端を上げて、ジントニックを飲み干した。
啓輔も同時に飲み干した後、カラリと氷を響かせたグラスを置き、席を立つ。
「 じゃ、僕はこれで 」
「 啓ちゃん 」
啓輔は、ゆっくりと振り返った。
「 慎ちゃんの事、頼むね 」
クスッと笑う啓輔。
「 慎ちゃんにも言われました。スズコの事、頼む、って 」
では、と爽やかな笑顔を残し、啓輔は部屋を出ていった。
慎ちゃん、何だかんだ言って、私の事好きなんじゃん。
私はククッと笑いながらスマホを手に取り、改めて表紙を見ては、ニヤニヤしていた。
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