第1話

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 でも、この中では仕事で一致していた。  男が飲みの席で最初に話すことと言ったら、やっぱり仕事関係になると思う。 「何か人がやってくることに文句付けてくるんだよ。なんか、仕事が面倒になって来たんだよな」  そう切り出したのは、意外にも鳥澤だった。  プライベートが順調にいっていたのはSNSなどで知っていて、たまに飲んだりもしていたがそんなことを言うのは初めてだった。 「分かるよ、それ。俺も地元にかえろうか、なんて考え始めた」  雄一も何か疲れように言う。 「最初は、給料が良いとかボーナスが周りよりも一番高い、なんて言われて入ったけど、結局そんなことはなかった。なんで選んだんだろう。騙されたよな」  それは、会うとまたに愚痴を零すけれど、入社当時から言っていたことだった。  初めのうちは、まだまだ役に立ててないから低い、もっと頑張らなければ、と言っていたけれど、だんだんと分かってきたように愚痴を零すようになった。  当時のクラスメイトが聞いたら、ほとんどが納得するかもしれない。  騙されたと。
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