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「だね。仕事は慣れたけれど、なんかやっぱり違うなと思う」
鳥澤はボイル(豚もつ)をお玉杓子で掬い皿に入れ箸に持ち替えて口に入れる。
息を深く吐き出し、カシスオレンジを飲んだ。
「十年働いてるし、今やめないともう就職とか無理だよな」
いきなり話が重いな、と感じ始めた。
この時間帯に真新しい居酒屋でするには、あまりにも場の雰囲気が違う気がしたが口にはしなかった。
襖越しに聞けてくる中年男性やその部下であろう若い青年たちの声。複数のカップルやサークルの飲み会でテンションが上がっているのか、大学生と思わしき男女の声が混じっている。
「降矢は会社どう?」
通信端末をいじっていた海斗に雄一が尋ねた。
「うん、楽しいよ」
通信端末を後ろに置き、何もないように答える。
「最近、後輩連れて久しぶりにダーツに行ったけど、やっぱり楽しい」
二人とは打って変わって、降矢は疲れた様子もなく言った。
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