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叩きつけるような勢いで障子が開かれ、男が部屋に飛び込んできた。
きこの叫び声をきいてやって来たのだろう。
きこは男の怒声にびくりと身をすくませ、口を大きく開けたまま固まる。
きこが黙ったことと、助けが来たこととに安堵して、沖田はそっと息を吐いたようだった。
「土方さん――」
「おまえ、それはこいつにやられたのか!」
鼻血を出している沖田をひと目見て、土方と呼ばれた男はきこを睨みつける。
今にもつかみかからんばかりの形相に、きこの喉からつぶれたような悲鳴が漏れた。
相手は沖田よりも背が高く、精悍な容貌をしている。
目は射抜くような力があり、金剛力士像のような迫力を持ち合わせていて、つまり、とても怖い。
「ご、ごめんなさいいっ! わたしがやりましたっ」
土下座をせんばかりの勢いで腰を直角に折り曲げ、謝罪する。
沖田ではなく、土方に。
「土方さん! やめてください、ぼくは大丈夫ですから。
それにこの方も、わざとではなかったんです。
たまたま、手が当たってしまったんですよね?」
「え? ……あ、そうですっ。た、たまたま! たまたま、たま」
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