詮議の場

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「なんでおめぇは、そんなに俺たちの内部事情に精通してる?」 「だから、それはわたしが未来から来たから――」 「いいえ、そうじゃないでしょう。 わたしたちのことを探っていたのではないですか?」 「奇妙な容姿と、態度で騙しきれると思ったか? あいにくと、それで騙されてくれんのは、極度のお人好しか馬鹿くらいのもんだぜ。 ……吐け。 てめぇ、どこの者だ?」 「正直に言った方が身のためです」 土方と山南に迫られ、きこの口はぽかんと開いている。 どうして、すべてがすべて、ここまで裏目に出るのだろう。 どうして、こいつらは信じようとしてくれないんだろう。 なんなの? 本当に、なんなの? 怒りと焦燥で、体がどこかもげそうになる。 叫びながら、でんぐり返しをしたくもなる。 きこは傲然とした態度で、ふたりを睨み返した。 「さっきからずっと、正直に言ってるんですけど! なんか尤もらしく言ってるけど、あなたもあなたも、全然合ってないからね! 間違ってるからね、恥ずかしいよ! そんなに信じられないって言うなら、これから先に起こることを、ひとつ予言してあげますよ!」 鼻息も荒く言い放つが、きこにしては上出来ともいえる提案だ。 やはり人間は、窮地に追い込まれると本来の賢さや力を発揮する生きものなのだろうか。 しかし、新撰組の面々が、たとえば池田屋事件や大政奉還をあらかじめ知ることで、これから先の流れが、史実と変わっていく可能性について、きこはまったく考慮していなかった。 その、自分の命と拮抗する、場合によってはそれ以上に重大な問題点が見えていれば、あるいはきこはそんな提案をしなかったかもしれない。 恐らくは、なんとか頭を絞り、他の方法を見つけ出そうとしただろう。 しかし、浅慮で盲目なきこは、あっさりと先の予告をしてしまう。 多大にケンカ腰ではあったが、それは明日の天気を告げるような気軽さだった。
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