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「ああ……そうだな」
山南に続いたのは土方だった。
内心は怒りに震えているが、表面上では平静を装って強引に話を引き戻す。
永倉と原田を張り倒したい衝動を抑え、ひとまずは副長としての体面を保たなければならない。
「空から降ってきた怪しい女を、無罪放免と京に放すことはできねぇ。
屯所内での扱いに困るところではあるが……俺は山南さんの案に賛成だ」
「おお、良かった!
実はトシのことだから、斬り捨てるなんて言い出すんじゃないかと懸念していたよ。
だが、もう安心だ。
二人の言うとおり、春田くんは壬生浪士組が保護しよう」
人好きのする笑みを浮かべて、近藤は明朗に言い放つ。
土方の眉が、ぴくりと吊り上がった。
近藤はさっきから、土方に向けてちょくちょく悪態を投げつけてくる。
それが悪意のないものであるから、なおのことたちが悪い。
近藤にきこと同じものを感じて、土方は静かに息を吐いた。
「まあ、問題はあいつをどう扱うかだな。
万が一、あいつの言うことが実現した場合には、是が非でもうちに欲しいってことになる。
そう考えると、それがはっきりするまで牢に監禁ってわけにもいかねぇだろう」
「そうですね。
相手がこちらに、あるていどでも心を許せるような関係性が必要です」
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