新しい生活

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壬生浪士組の朝は早い。 いや、こちらに落ちて来てからというもの、きこは時刻という概念をすっぽり無視して生活しているから、実際のところは分からない。 なにしろ、こちらでの時間を表す単位は、明六ツだの暮六ツだのと意味が分からない上、卯の刻、子の刻と干支まで出てくる。 複雑すぎて、理解できるわけがない。 ただ、体感としてはものすごく早いのだ。 電気がないせいもあるだろうが、皆、じいさんのように早寝早起きを習慣としている気がする。 現代人のきこにしてみれば、うまく馴染めないところであった。 壬生浪士組に保護という名の軟禁を強いられてから、もう三日が過ぎている。 家族や友人に会いたいのはやまやまだが、帰り方が分からない以上は、ここに留まるほかない。 土方や山南は怖いけれど、他の人たちは親切だし、ご飯もきちんと出てくるし、お水はおいしいし、現状、きこに不満はなかった。 毎夜、ふとんの中で現代を思い出してはわんわん泣いているけれど、一度眠ってしまえば、悲しみも不安もけろりと忘れてしまう。 屯所内の掃除をしたり、歌を歌ったり、土方に怒鳴られたり、めげずに隊士たちとお喋りしたり、なんだかんだで楽しく過ごしているのだった。
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