短編小説デジャヴ【完結】

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二人の人影が動く。一人は跪き何かを話している、一人は驚いた表情を。 『なんだと!!』 一人の青年が一方の老人からの報告を受け、怒鳴り声が響きわたる。 『奴が生きているとでも言うのか。確かに始末したはずだが……』 『ええ、確かに私の配下より始末したと聞いております』 と家臣らしき者が跪いたまま答える。 『もうよい、下がれ』 言葉を受け家臣が立ち去るに合わせ巨大な戸が音も無く開閉し、家臣が去り青年一人となり静寂に包まれる。 青年は『フゥ』と溜め息をつく。 『まさか奴が生きていたとは…。このままでは私の計画の邪魔になるな……。消すか。』 と誰に言うわけでなく独り言のように、そう、呟いた。 青年が居る場所は柱のみで壁が無く、だが無風でありながらも外の景色は見える。もっとも見えるのは雲一つない空と下層に広がる雲の絨毯しかないが。周囲には数本の柱しか無く天板を支えるにはいささか頼りない無骨な柱である。 柱は金属とも石材とも違う特別な金属で作られてようで時折キーンと甲高い共鳴音が響きわたっている。
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