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どうやら奴はおれ達の行動をどこかで察知していやがったらしい。
「それはどこだ?」
「今日、最初にいった場所。カキハラの昔の家。あそこにわたしがいったことに気づいて、後からいったみたい。今もまだ待ってる」
奇しくも、奴とはじめて会った場所が決戦の地になるとは、どこまでも皮肉な野郎だ。
2
おれがかつて少年時代をすごした家に再び到着した頃には、すっかり日は落ちていた。
少し離れた位置にエアカーをパークしてから向かうと、やはり紫苑はペンフィールド波で奴の存在を感じるようだ。
「わたしのこと、家族っていってる」
「おれとあいつ、どっちがおまえの家族だと思う?」
「カキハラ」
「だよな」
まさか、こいつにこんなふうにいわれて喜ぶ日がくるとは思わなかった。だが、これは確実に同一の存在であるラブレスを拒絶しているということだ。
いい傾向だ。
かつての家の庭に回り込むと、割れた窓ガラスの先――キッチンの朽ちた椅子にラブレスが腰かけていた。
「思い出巡りの旅はどうだった? 垣原刀治」
「うるせえ、ぶっ殺すぞ」
おれはホルスターから銃を抜いて、ラブレスめがけて引き金を二回引いた。
だが、当然の如くかわされてしまった。アクセラレータを機動したのだ。
「弾が見えるのは十秒間。カキハラ……気をつけて」
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