3.開花/bloom

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 だが、ペンフィールド波によって紫苑と繋がっているラブレスは、彼女が放った弾丸をすべて事前に察知していたようで、ことごとく空中で撃ち抜いてみせた。 「無駄だ。おれとおまえとでは勝負にならない。おとなしくおれのところへくるんだ」 「嫌。わたしはカキハラといたい」  紫苑は弾切れになった拳銃を捨ててラブレスに向かうと、後ろ回し蹴りを繰り出した。ラブレスもまったく同じタイミングで後ろ回し蹴りを繰り出し、二人の脚が交差する。  だが、格闘戦となると二人の体格差が大きく出たようで、紫苑が押し負けて弾き飛ばされた。  無理だ。身長体重ともに差がありすぎる。紫苑では勝ち目がない。おれは暗いリビングの中でラブレスに弾かれた拳銃を探した。  だが、それでも紫苑はラブレスへと向かい、右の拳を繰り出すが、思考が通じ合う二人の挙動はまったく同時で、二つの拳が正面からぶつかり合うが、やはり負けるのは小さな紫苑の拳だった。  さらにラブレスが右拳を繰り出し、紫苑もそれに合わせようとするが間に合わず、紫苑の顔面をラブレスの拳が貫いた。  さらにラブレスのボディブローが紫苑の腹にめり込み、紫苑は床に胃液を吐き出して膝を着いてしまった。  早く紫苑を助けなければ――そしておれはようやく自分の拳銃を見つけて、ラブレスに構えた。
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