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結局、こいつの寝床として買ったソファもまだ一度しか使っていない。それに、こいつが死んだらレイチェルに何て説明しよう。
いろいろ考えたあげく、おれは悟った。
無理だ。おれには撃てない。
すると紫苑が左足を振り上げると、ハイカットスニーカーから折りたたみナイフが飛び出し、それを左手で受け取ると刃を出して、逆手でラブレスの胴体へと突き立てようとする。が、思考を読んでいたラブレスは紫苑の首から手を離して後方に飛び退いた。
その隙におれはラブレスめがけて引き金を引くが、放たれた銃弾が命中することはなく、ラブレスはそのままリビングルームから廊下へと出て、壁越しにいった。
「まだわからないのか。貴様らが偽りの家族だということが」
「てめえみてえなイカレ野郎に、まともな教育ができるとは到底思えないんでな」
「まあいい。今回は警告だけにしておいてやる。剥製屋が紫苑に目をつけた。奴はヴューカニッチと繋がっている」
「剥製屋だと?」
剥製屋グリンウォルドは闇医者や違法改造技師に人間や人造人間の臓器や肢体を提供している悪趣味なバグだ。だとしたらウォルター・ヴューカニッチに素材を提供しているのはこいつに違いない。
そしてこいつは様々な暴力団や犯罪組織へのコネクションを幅広く持ち、警察や様々なデバッガーでさえ長年追い続けている裏社会の大物でもある。
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