3.開花/bloom

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 わざわざおれに知らせるということは、奴の手に紫苑が渡ることはラブレスにとっても都合が悪いようだ。 「紫苑はいずれ、自らの意志でおれといることを望むだろう。それまではせいぜい家族ごっこでも楽しんでいろ」  そういい残して、ラブレスの足音は玄関のほうへと向かっていった。  奴の気配が消えると、紫苑は緊張の糸が切れて、途端に腰を抜かした。荒い呼吸をなんとか整えているようだ。  こいつはおれに、自分ごと撃てといいやがった。おれにそんなことができるとでも思っていたのか。  おれは紫苑の肩を掴むと、無理矢理こちらを向かせて、平手で頬をぶん殴った。  こいつは、自分が殴られた意味がまるでわかっていないようで、目をうるませながらこちらを見ている。 「カキハラ……何で殴るの?」 「殴られるより銃で撃たれたほうがよかったのか?」  紫苑は何も答えずに目を伏せた。  ウォルターはこいつを喉から手が出るほどほしがっているようだが、こいつにそれほどの価値があるとは到底思えない。おれからすればただのガキだ。  いずれにせよ、剥製屋に目をつけられたのは厄介だ。ウォルターの件も含めてダニングのおやっさんを頼ったほうが賢明だろう。剥製屋グリンウォルドは一介のデバッガーの手に負えるような相手ではない。  おれは携帯電話を取り出してダニングのおやっさんにコールした。
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