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この腐りきった地球では、今や環境汚染による健康被害があまりに深刻化しているため、女性が妊娠、出産するにあたって厳しい認可制度が設けられている。そのため、子供を作ろうと思えば、まずは夫婦そろって病院に申し出て、ユーテラス生命株式会社が運営するライフ・バンクの規定に健康状態よしと認めてもらわなければならない。おかげで地球の人口は過疎化の一途をたどっている。
ちなみに、今の規定では出生を認められるのは十組中一組がいいところだろう。ともすれば人口過疎も無理のない話だ。
その過疎対策として作られたのがカレルチャペック社製の人造人間。汚染環境に適応した人間の代替品、いわば新人類ってやつだ。おれはその人造人間が嫌いだ。
それをわかってもらうには、まずはこのおれ、垣原刀治(かきはら とうじ)のくっだらねえ昔話を聞いてもらおう。
あれはそうだ。おれの十二歳の誕生日のことだ。おれの両親は、いわゆる富裕層と呼ばれる程度には裕福だったが、家庭環境は冷えきっていた。形式的に作られた料理の数々がテーブルにならべられて、形式的に用意した菓子屋のケーキを真ん中に置いて、形式的に冷たいバースデイソングを歌っている。
そんなものは子供の目にもわかった。この両親はただ決められた形式を守ることが好きなだけだと。我が子の生まれた日を祝うことも形式的な行事でしかない。
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