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しかし、奴らの相手をするのは異様に疲れる。まだ脇腹の抜糸もすんでいないというのに足まで撃たれたんだ。カレルチャペックに電話をかけるのはアパートに戻ってからにしよう。
3
紫苑がシャワールームに入っている間におれがカレルチャペックにコールすると、アジールが電話に出た。
「どうかされましたか垣原さん」
「おい、聞きたいことはふたつだ。まずひとつ。こないだの協力の件はどうなってやがる」
「その件でしたらアイザック様と話し合った結果、我々は電話越しでのみサポートさせていただくということになりました」
「だったら一言おれに知らせろ」
「これは失礼しました。で、ふたつ目は何でしょうか?」
いつも思うが、こいつらは本当にこっちの意志や主張を無視して完全に自分のペースで話を進めやがる。
今やっと気づいた。異様に疲れる原因はこれだ。
おれはせめてもの抗議の証としてわざとらしく咳払いをしてみせた。
「おまえら、蛇尾會のモウ・タンユは知ってるか?」
「はい。裏社会では名の知れた人物なので当然ながら存じておりますが」
「奴はカレルチャペックの上層とも通じてやがるのか?」
「そのような話を耳にしたことはございません」
と、アジールは口にしたが、一瞬だけ返答に詰まったような気がした。これは何かを隠してやがる。
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