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「おまえ、あのじじい……アイザック・シェリーシュタインのことどう思う?」
「お爺ちゃんは変な人だからあまり好きじゃない」
「だよな」
どうやらこいつもおれと同意見らしい。
それにしてもお爺ちゃんか。あんなの腐ったスパゲッティじじいでじゅうぶんだろ。
紫苑はそんなおれの苛立ちをよそに、日本の古い文献にある集団浴場の挿絵よろしく火照った体でミルクを飲みながら二人がけのソファに腰をおろすと、ベッドに腰かけていたおれにいった。
「カキハラ……こっちこないの?」
「こっちがおれゾーン。そっちはおまえゾーンだ」
と、おれのベッドと紫苑のソファを指さしていうと、紫苑はむくれていった。
「カキハラ……子供みたい」
「正真正銘のお子様にいわれたかねえよ」
「大人子供格好悪い」
どうせ大人子供というのはレイチェルの入れ知恵だろう。
どうやら、あまり女同士で仲よくさせるとよくない言葉を覚えるようだ。
だが、一人ソファでテレビ画面を眺める紫苑の後ろ姿が少し寂しそうにも見えたので、仕方ないから隣に座ってやった。
テレビには例によってチャーリー・コットンが出ていた。
「この人……あまりおもしろくないよね」
「だよな」
はじめて会った日にも同じような会話をしたような気がする。あの日からおれのこいつに対する認識はどれだけ変わっただろうか。
少なくとも、あの日のおれならば、こうやって二人ソファで肩を並べてバラエティ番組を眺めるなど考えもしなかっただろう。
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