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若干のスピード違反で署に向かうと、駐車場にエアカーをパークした。少々雑だが今は急を要する時だ。
署に駆け込んで階段を駆け上がり、会議室を目指す。
しかし、いざ会議室の扉の前に立つと、中から重苦しい談義の声が聞こえる。これは非常に入り辛い。
ベートーベンの交響曲第五番よろしく重苦しい思いで扉をノックすると、室内の話し声がやんだ。運命がどのようにして彼の扉を叩いたのかが少しだけ理解できたかのような気がした。
少しだけ扉を開いて中を覗くと、空中ディスプレイで参考資料が写し出された室内で、指揮棒を持って立つ、ダニングのおやっさんに負けず劣らず頭皮をむき出しにしたガーランド署長と目が合った。ガーランド署長がおもむろに咳払いをする。「入りたまえ」と、いうことだろう。会議室を満たしている仏頂面をした暑苦しい面々の視線が痛い。
おやっさんの隣が空いていたので、おれはいそいそと背中を丸めて席に向かった。
極力音をたてないようにパイプ椅子を引いて席に着くと、おやっさんに資料を渡された。
「どうして電話に出なかった」
と、おやっさんが声を押し殺していう。
「仕方ないだろ。おれだって忙しいんだよ」
何しろ昨日は一日思い出巡りをしたあげく、ドンパチかまして足を撃たれている。何ごとも体が資本だ。人間ならば疲れたら早寝もするし昼まで寝ることだってある。
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