278人が本棚に入れています
本棚に追加
「先ほど、こちらのアパートで殺人事件が発生しました。被害者は四十代の夫婦で、現場にいた被害者の子供に怪我はなく、たった今、通報を受けて駆けつけた警察の手で保護された模様です。長年に渡り、世間を騒がせ続けているラブレスと呼ばれるバグによる犯行という可能性もあります。逃亡中の犯人に関する有力な情報がございましたら、こちらの番号までお知らせください」
画面が切り替わり、デバッグ機関のコールセンターの番号と、ラブレスの写真が映し出された。おれが以前奴と対峙した時に、胸ポケットに差していたボールペン型カメラで撮影したものだ。趣味の悪いゾンビマスクをかぶっていて顔はわからない。おそらくだが、奴の素顔を知っているのはおれだけだろう。
「すまねえ婆さん! 勘定はここに置いてくぜ!」
おれはしわくちゃのドル紙幣をコートのポケットから取り出してカウンターに叩きつけると、急いで店を飛び出した。間違いなく奴の仕業だ。半年ぶりじゃねえか……会いたかったぜラブレス。犯行時刻からしてまだ遠くには逃げてはないだろう。今日こそおれがこの手でしとめてやる。
大通りの人混みをかき分け、事件現場へと向かいながら携帯電話を取り出してデバッグ機関へとコールすると、通話はすぐに繋がった。
「おれだ! 奴が現れたのに何ですぐおれにいわねえんだ!」
最初のコメントを投稿しよう!