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某SRPGでいうところの序盤専用のお助けキャラあたりのポジション。初期値だけは高い、といっても『ヒューマン』の中での話。
外にいる兵士を基準にすると、ごく一般的な一兵卒と素手でようやくタイマン張れるレベル。動物や『モンスター』とは武器なしでの戦闘も詰み、絶望的らしい。
かといって彼女に戦闘能力があるのかといえばそうでもない。『ダンジョンマスター』の能力は空間を生み出すだけ。権限で漆黒の宝玉からあらゆる物を引き出せるが、引き出すたびに脂汗を滲ませて苦痛に耐える姿はあまりに忍びない。
漆黒の宝玉は『ダンジョン』が外界と接続されるのは、主が選定されて初期化されてから3日だというのだ。
基本的な情報こそ渡してくれるが、現在の『ダンジョン』が外界でいうどこに存在しているのか、外界の文明はどれほど発達しているかなど、事前に知っておけば優位に進めれる情報は全く入ってこない。
だから、俺も彼女も頭を悩ましている。特に彼女の負担が重すぎてどうにも首が回らない。協議する内容は主に残された容量を配分することに終始する。
宝玉は奥の手、緊急事態に備えて温存する。とは言っているものの、使わないに越したことはないと、俺が彼女を説得して遠ざけているだけ。
便利すぎる物ほど足元を危うくする。しかし、人間は弱いものでその誘惑と魅力に取り憑かれそうになる。
彼女の能力を分配した後は、外界と接続されてからのことを話し合う。この手を血に染めること、つまりは命をいただき、生きていくことを覚悟する。
お互いに首を締めあって殺すとはどういうものかを擬似的に確かめる。
少しでも殺したときの気持ちが楽になれば、という配慮だ。我ながら狂った提案だとベッドに寝かせた彼女を介抱しながら思うのだった。
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