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黒髪の美少女は、俺の突然の行動に一瞬硬直するが、腕を振りほどくことなくされるがままでいる。
いいにほいがする、露骨に犬みたいに嗅いでもないけど、密着していると髪からはシャンプーとかリンスの、制服からは洗剤の香りが互いを邪魔することなくふんわりとしてくる。香水は振っていないようだ。
「一言だけ、俺に一言だけこう言ってくれないか?」
俺は彼女の髪をかきあげて耳元で囁く。言って欲しい言葉をこっそりと伝えると、彼女は酷く狼狽えて徐々に耳が赤くなり、回してる腕を掴んでくる。
「嘘だっていい、心から思ってなくてもいい、一言だけ言ってくれればいい。俺の血も肉も、命さえも君にあげられる」
こんな美少女に言ってもらえるなら、男冥利に尽きる、て奴さ。まあ、そんなこと言われなくても目の前にいる彼女の為なら何だってやろうて気にはなる。理屈とか、打算とかではなくて。
彼女は掴んでいる俺の腕を下ろさせて振り返って此方に向き直る。耳と頬が赤くなっているが、瞳に映る色は何か違う。
顔が近くてよく見える、唇が思うように動かせなくて困っているようだ。
「……しています。その、私も……して下さい」
俺は自分の予想の上を行く答えに、動揺を隠しきれず一瞬戸惑い、色んなところが熱くなっていくのが分かったが、すぐに答えを出す。
「……」
声に出す必要はない。俺は一つの動作で、彼女に触れて肯定の意を現す。彼女もそれを受け入れてくれて、形は無いが確かな盟約となった。
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