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突然、積み上がっている石が崩れるような音がしたので、少女を庇い頭から覆い被さって抱き締める。
音が止んで無事だったので、何があったのか音のした所を確認すると俺たちを閉じ込めていた部屋の一角に、人一人は十分に通れるほどの穴が空いている。
穴の向こうも灯りはなく同じく暗闇に支配されていて、飛び出るのは危険だというのが分かる。しかし、ここにいても何も進展はしない、ただ確実に死がやってくるだけ。
「……行こう」
彼女の手を取りながら俺は先に立ち上がり、彼女が立ち上がるのを手伝い、自分の後ろをついて来させる。「大丈夫」だとかそんな安易な言葉は掛けない。
現状、何が起こるかなど一寸先も分からない。俺の片腕を彼女は組んでついて来ているが、不安と恐怖、身長差、足元が危険というのもあって歩幅は小さく感じる。
何かの通路、壁や床、おそらく天井もだが、部屋のような所と同じ材質で出来ているのだろう。踏み締めている音と感触が先程から全く変わらない。
部屋を離れてからずっと一本道で曲がったり、分岐することはなく歩き続けていると扉のない大きな門構えが見えてくる。
潜って中に入ると、どこぞの宮殿かと思うほどの広い空間にでるが、暗闇の中で統一されている材質を見るのは不気味で精神的に不衛生のように感じる。
「……奥に何かがあるな」
真っ暗で、無機質な中でそれはとても異質な存在感を放っている。夜行性の昆虫たちが何故光を求めるのか分からない、ただそれに引き寄せられる俺と彼女の姿はそれに似ていたことだろう。
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