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異質な存在、それは台座のような一般的なテーブル大の積み石に納められている。少なくとも地球上には存在しない。全ての元素原子の特徴と特性を覚えているわけではないが、断言してもいい。
「……こんなものあるわけがない」
「だが、現実として目の前にある。世紀の大発見かもしれないな」
間近でそれを見て、彼女も同じような感想を抱いたようなので、軽口を叩きながら現実へと引き戻す。
目の前で絶えず漆黒の靄(モヤ)と淡い蒼が渦巻いている宝玉を、地球上の科学的見地で常識的に理解しようとすればするほど、それはあり得てはいけないものだから。
「貴様は一体何者だ?何故、俺たちを拉致誘拐をした目的は何だ?答えろ」
宝玉へと話し掛ける俺の姿は異様だろう。だが、彼女は何も言わず事の成り行きを見守っている。直感、不確定要素が大きいものに頼るのは不本意だが、この宝玉は意思のようなものを持っている。
『──お待ちしておりました、我が迷宮の主よ。あなたをマスターとして初期化を始めます……』
無機質な電子音、ゆっ○り○ービーメーカー、某○○イドソフトのそれらとは違う音声が、日本語いや俺たちの理解できる言葉でそれは話した。
ただ、こちらの質問に答えるつもりもなく、勝手に話を進めようとする。
「おい待てよ、先に質問に答えろ。何故、俺たちをここへ連れてきたのか、まずはそれから……」
批難して此方がペースを握れるようにしようとしたところ、腕を組んでいた彼女の膝が落ち女の子座りをしたかと思うと息を荒げて苦しみ出す。
額は汗が滲み、尋常ではない叫び声をあげる。俺は現状に対して何も出来なかった、ただ情けなく彼女見つめ支えることしか出来なかった。
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