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「お前ぽかぽかして、すっげぇ暖かい。人間カイロだ」
「翼もすっごく暖かいよ。何だか瞼が、重くなってきた……」
「俺も……マサの介護に疲れたから……ちょっとだけ、休む……」
――介護って、看病の間違いだろ!?
あえて、ツッコミを入れるのは止めにした。だって本当に翼は、よく頑張ってくれたんだから。
慣れない料理を作ったり、俺のおねだりを渋い顔をしながらも、きちんと聞いて応えてくれたんだしね。
「前はキライばっか言ってたのに、今は翼の方が好き好き言ってるよ。俺ってば、愛されてるなぁ」
気持ち良さそうに寝ている翼に、そっと寄り添った。今日のお返し、どうやって返そうか?
「そもそもホワイトデーに、何をあげていたかな?」
バレンタインのチョコを、自分の母親と妹の二人にしかもらったことがなかったので、お返しはコンビニで売ってる、ホワイトデー用のお菓子の詰め合わせを渡していた。
「むぅ、クッキーとかキャンディなのかな。翼が喜びそうなのをあげたいんだけど……」
考えながら、そっと視線を翼の顔に移すと、しっかり目を開けて俺を見ているではないか!
「……っ!!」
「お返しは倍にして返さないといけないから、すっげぇ大変だよな。ま、体でしっかりと払ってもらう予定だけど」
「体で倍にして……?」
「足腰が立たなくなるくらいのを、覚悟しておけよ。だから今は、しっかり休んでおきなさい!」
そんな凄いことを言い放ち、俺の背中をポンポンして、寝かせようとする翼に、声を立てて笑ってしまった。たまには、翼のおねだりも聞いてあげないといけないよね。
「分かったよ。でもね昨年、翼に言われてから、しっかり足腰の強化したんだ。ちょっとやそっとじゃ、音をあげないから」
「へえ、それは楽しみだな。受けて立とうじゃないか」
「俺だって、負けないからね」
端から見たら可笑しな勝負だけど、これが俺たち流の愛し方。最初からそうだった。
クスクス笑いながら、お互い抱き合って、その夜は安眠した。
後日俺が完治してから、しっかり勝負をしたんだけど、皆さんの予想は、どっちに軍配が上がってるんだろうか?
俺、いい歳なんで、一目瞭然だよね。
おしまい
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