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「こんなエロ魔神が、警察学校で伝説の刑事と言われ、崇め奉られてるなんて、信じられねぇ話だよな」
「エロ魔神って、酷くない?」
「食いつくトコ、そこじゃねぇだろ。伝説の刑事の話のくだり」
モグモグ食べてる俺の額に、デコピンした翼。冷却シートのおかげで、あまり痛くないもんね。
「何か凄いことでもした、刑事の話なの?」
「仕事の出来る巡査を上の力で刑事にしようとしたけど、彼はそれを断り、自力で試験をトップ合格。その後優秀な刑事となり、所轄の汚職事件を華麗に解決した署員が、この界隈にいるんだという話を、学校の先生がしていたんだ。君たちも彼のように仕事に情熱を持って、頑張って欲しいとさ」
「うっ……それって俺のこと?」
思わず、自分を指差してしまった。脚色されるにもほどがある。
「だろうな。この話を聞いてて俺、思わず吹き出しちまった。ま、変な噂じゃなくて何よりだけど」
そう言って、後ろから抱き締めてきた翼。
「マサに憧れて刑事になるヤツ、いるんだろうな……」
「そんな人、いるのかな?」
「いるかもしれねぇだろ。憧れが実際に会って、好意に変わり……」
「何か、伝説の刑事なみに脚色しているよ」
呆れて振り返ると、真剣な顔をした翼と目が合った。
「その好意に気付かず、無視し続けた結果、水野刑事は襲われるのでした」
「酷い話だね。物好きは、翼ひとりで十分です。変なことを言って、俺を悩ませないでよ」
「実際悩んでるのは、俺なんだ。お前が無神経過ぎるんだろ、まったく……」
「そんな」
「政隆をどっかに、閉じ込めちまいたいな。誰にも渡せないように」
抱き締めた腕に、ぎゅっと力が入り、後ろから首筋にキスをしてきた。ゾクリとした甘い衝撃が、体を駆け巡る。
「何か、熱いなお前。大丈夫か?」
唇で体温を知ってしまった翼に、苦笑いをして誤魔化したけど、実はちょっと前から、熱が上がってきていたのだ。
「うん。ご飯をしっかり食べて、薬飲んで寝ちゃえば、どおってことはないよ」
かき込むようにして、おじやを食べ終えると、傍らに置いていた風邪薬が入った袋を、颯爽と手に取った。しかしそれを素早く奪い取る翼。
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