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「せっかく……せっかく翼が、帰ってきてるというのに。俺ってばホント馬鹿みたい……」
無事に警察学校を卒業し、こっちに戻ってきた、俺の大事な大事な恋人。矢野 翼――
前回会ったのは、もうかれこれ半年以上前の話。警察学校に行って、身体をこれでもかって鍛えられるので、高校生の時よりもうんと大きくなっていて。
『お前よりも身長、でかくなってやる!』
との宣言も半年前は、ギリギリ俺の身長を越えていた(本人曰く。実際は俺と同じ目線なんだけどなぁ)
翼はいろんな苦労を経て卒業してきたというのに、俺は忙しさに負けて風邪をひき、見事寝込んでしまったのである。
「馬鹿と変態は、風邪をひかないと思ってたんだがな。他の奴等にうつしたら、いかんから、医者に行ってから帰れ!」
そんな心優しいデカ長の言葉に甘えて、言われた通り病院へ行き、帰宅して薬をしっかり飲んだ。
自分が病気の時って心細くなるくせに、逆に心配かけちゃいけないからと、翼への連絡を途絶えている。
「すっごく会いたいけど、風邪うつしても可哀想だし……夢の中で、会えれば……いいか……」
病院からもらった風邪薬が、俺を深い眠りへと誘う。まともな睡眠、久しぶりかも。
そう思いながら、ストンと寝落ちした。
どれくらいの時間が経ったかは不明。微かな物音が、俺の耳に聞こえてきた。
ガチャっと鍵を開ける音がして、玄関の扉がゆっくり開く音。静かに誰かが入ってくる気配を感じたけど、体はおろか瞼すら動かすのが億劫で。息を殺したその侵入者は、俺の額にそっと冷たい手を押し当てた。そのひんやりした掌が、とても気持ちよくて思わず微笑むと、途端に離されてしまう。
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