Sweet's Beast Whiteday

3/13
前へ
/13ページ
次へ
(冷たくて、気持ちよかったのに……どうして離しちゃうんだよ!)  抗議しようにも薬のせいなのか、風邪のせいなのか、思うように身体が動かない。身体は動かないものの、頭はしっかり動くので考えてみる。  えっと鍵を預けてるのは、家族と職場、あと翼――もしかしてこの手は翼なのか!?  眉根を寄せ、むむっと頑張って全身の力を振り絞り、ガバッと起き上がったら、そこには誰もいなかった。 「……随分とリアルな夢、見たみたい」  俺は額に手を当ててみる。冷たくて気持ちよかった、大きな掌。 「ん、まだ熱が下がってないなぁ。どんだけ弱ってんだよ……」  ため息をつき、しょんぼりしながら布団に潜り込んだ。そしてぎゅっと膝を抱える。 『薬も……水も、酸素もいらない。ただお前が……水野がそばにいてくれたら……それで、いい……』  前の恋人、山上先輩が風邪で寝込んだ時に、俺に言った台詞。その台詞が痛い程、今の自分にマッチしている。 「翼が傍に、いてくれたらな……」  目を瞑って頭の中に思い描く、微笑みながら両手を広げた翼の姿――俺は急いで翼に向かって、その体に飛びつくのだ。  実際に抱き締めてるのは、自分の足なんだけどね。(マジで寂し過ぎるぞ)  心も体も、かなりボロボロだよ。  早く寝て、風邪を治そう! 大好きな翼へ会いに行くために――
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加