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俺が抗議すると、自分の体調管理が出来ない大人が、よく言うよ。と窘められる始末……
「散々心配かけさせておいて、いざ会ったらパジャマ姿で抱きつき、潤んだ目で俺を見るお前に、どんだけ俺が我慢したと思ってんだ! しかもホワイトデーのお返しがインフルエンザって、普通はあり得ないだろ。バカ水野!」
「いやいや。翼は優秀な外科医役だから、きっと大丈夫だよ、うん」
怒りまくる翼を宥めるべく告げてみせたら、ヒクッと顔を激しく引きつらせた。
「……お前の話、さっぱり理解出来ないんだけど」
「俺が翼の高校でケガをしたとき、保健室で治療してくれただろ。そのときに、ちょこっとだけ妄想したんだよね」
「ちょこっとの妄想……俺が、優秀な外科医役なのかよ?」
「そうそう、研修医だけどね。まさか今回も、治療されるとはラッキーだなぁ」
俺はおでこに貼られた冷却シートを、嬉しそうに指を差した。
「お前が変なヤツだと分かってはいたが、ここまでくると言葉にならねぇ……」
「そんな俺のことが、好きなんでしょ?」
「認めたくないが、好きだろうな」
苦笑いしながら俺の体を、ぎゅっと抱き締める。伝わってくる翼の温もりに、じーんと幸せを感じた。
「マサに一番最初に、知らせたかったことがあるんだ。俺の配属先について……関さんがメールで、こっそり教えてくれてさ」
「へえ、どこになったの?」
翼の顔を見上げると、クスッと笑いながら、
「せせらぎ公園前派出所勤務になりました。初めてのことで不安がたくさんありますので、色々ご指導下さい、水野先輩」
更に俺を、強く抱き締める。
そこって、元職場じゃないか! うわぁ運命を感じちゃうなぁ。
――しかも、水野先輩って。
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