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無菌室に入って
5分もしないうちに
ゆっくりと聖の瞳が
開いて行く。
「紗枝…?」
「聖、私はここにいるよ」
微笑んで掛けた声に
彼はホッとした表情を
浮かべてまた目を閉じる。
きっと意識が朦朧と
しているのだろう。
瞳を開いては閉じ
開いては閉じの
繰り返しの中で
それでも彼の瞳は
彷徨って私を見つけ出す。
こんな状態の彼に
残酷な現実を突きつけるなんて
私はどこまで鬼になれば
いいのだろう。
けれど…
伝えなくては…。
「聖…話したい事があるの」
泣きそうな気持ちを
必死にねじ伏せて
私はうつろな瞳の
聖にそう言葉をかけた。
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