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「聖…あなたは必ず…
父親になれる日が来るから。
いつか巡り会う我が子のために
これからも必死に生きて」
私の言葉を黙ったまま
聞いていた彼は、
静かに目を伏せ何も
答えてはくれなかった。
ただ…
何度も何度も私の名を
ポツリポツリと呼びかける。
「紗枝…」
「うん?」
「紗枝」
「聖、私はここにいるよ」
握りしめた手に
ぎゅっと力が込められて。
瞳を閉じたままの彼が
小さく呟いた。
「アテナに…
早く会いたいね…」
それが私に掛けられた
聖の最後の言葉だった。
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