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浅い眠りの中で
数えきれないほどの夢を見た。
だけど最後に見た夢は
あまりに悲しくて
目覚めなければと思ったんだ。
その夢は愛しい彼女が…
光の中に吸い込まれて
俺の目の前から消えて行く。
どれほど手を伸ばしても
彼女は悲しそうに笑って
俺に背中を向けた。
「紗枝…」
必死に彼女の名を呼んでも
決して振り返らずに
その歩みを光の中に
進めて行ってしまった。
夢から覚めなければと
必死に瞳を開くと
そこには俺をまた心配そうに
覗き込んでいる
松田先生の姿が映り込む。
「聖…、大丈夫か?」
ああ…まだ俺、生きてる。
そう思いながら
小さくため息を吐いた。
しかし神は
なんて残酷なのだろう。
親父から貰った命まで
拒絶しようとするなんて。
どこまでも見放された
そんな気分だ。
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