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彼のその言葉に、バクバクと心臓が音を立てる。
私は恥ずかしさのあまり、月君から視線を逸らした。
そして逃げた。
本棚の隅っこに、身を隠してみる。
「優陽さん? 冗談ですよ? 上着、返しますから……」
月君の柔らかな声が耳に届く。
この喋り方、トーンの違い、声質。
……桜さんとはまったく違う男の子だ。
そんな彼にいつも余裕がなくなって、いっぱいいっぱいの自分。
それにしても、月君って本当に意地悪だ。
大人をからかうなんて、いい度胸をしている。
私は隠れていた本棚の隅っこから、ゆっくりと姿を現す……。
その瞬間、いきなり強い力で引っ張られた。
気がついた時には、テーブルの上に仰向けに倒されていた。
そして、視界に映るブルーの瞳。
真っ直ぐ見つめてくるその瞳は、一点の曇りも見当たらない。
月君に押さえられている手首が痺れてきた。
痕でも残るのではないかと思うぐらい、強い力だった。
こんな綺麗な顔からは、決して想像が出来ない。
「月君、離してっ……」
「……嫌です」
月君はそう言うと、私と距離をグッと縮めてきた。
……やだっ!
キスされるっ……!
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