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そう思った私は、咄嗟に顔を背けた。
その瞬間、空気が動いた気がした。
顔に月君の温かい息がかかった。
…… “キス” はされなかったのだ。
ただ、鼻先に歯がゆい感触が走っただけだった。
「可愛いですね。ねぇ優陽さん、そんなにオレの事が気になるんですか？」
「っ！ 何を言ってるのよっ？！」
「優陽さん、兄貴よりオレの事ばかりいつも考えてるんじゃないんですか？」
「そ、そんな訳ないでしょっ！ 私はあなたのお兄さんと婚約しているのっ！ 何度も言わせないでよっっ！！」
彼の言葉に、婚約を解消しようしていたのに
……私は反発してしまった。
ただの強がり。
っていうか、またからかわれているのかしら？
もしそうだとしたら、年下のくせに生意気よ！
「ふーん、そう。オレの事、少しも気にならないんだ？ じゃあ教えてあげましょうか。オレがアイツと何してきたか、」
「“アイツ”って？」
「奈央だよ！ さっき、遅れて一緒に来たでしょ？」
と言った月君の手が少し緩んだ気がした。
「そんなの、知りたくないわっ」
「うーそ、知りたいくせに……」
そのまま月君の手が頬に添えられる。
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