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「次は、か……」
次の生徒の名前を読み上げようとして、私の手が名簿の上で一瞬にして止まってしまった。
そこには、見覚えのある名前があったからだ。
「先生ー! どうしたんですかー?」
前列の生徒から、言葉が投げかけられた。
「ううん……何でもないのよ」
初めて先生と呼ばれて、照れてしまう。
……そうよ。
動揺したらダメ。
何かの間違いよ、きっと。
「次は花柳君……」
だってこのクラスには、私のよく知る人物……
その人の姿は見当たらないもの!
……きっと、同姓同名よ!
「花柳君、いないの?」
黒の名簿長には、出席者は○欠席者は×を書き込まなくてはならない。
ちなみに遅刻は△だ。
私がボールペンで、そこに “×” と書き込もうとした時、教室のドアが開けられた。
――ガラッ!
「いまーす…」
その瞬間、彼と目が合った。
その彼は、やっぱり私のよく知ってる人物だったのだ……
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