第一話『戦友との再会』

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何もない一直線の廊下で、壁にも天井にも何か仕掛けがある様には見えないが、足跡は何かを知っているように時折石を跨いでいる。  もしかしたら、罠の作動ブロックを把握しているのかもしれない。矢があった場所からは何一つ迎撃措置が作動した様子がないのがその証拠だ。  二人は長い廊下を足跡に合わせて進む。案の定何か危険なものが飛び出してくる気配はない。  そしてようやく廊下の終わりが見えてきた。ここも廊下の入り口と同じ、大きな厚い扉が佇んでいる。奥へ開かれたそれの傍の壁には何かの模様が描かれていた。念のため触れないようにしながら観察すると、それが小さな石を複数はめ込んだものだとわかる。表面が正方形をしており、計八つが四方三倍の隙間にはめ込まれていた。左下にもうひとつ入りそうだ。  上から見下ろす形で眺めるクリス。八つの石には複雑な模様が描かれ、石をきれいに並べることで一つの絵柄を作り上げているらしいのだが、なんとなく見覚えのあるそれにクリスは首を傾げる。 「これは何なのかな。この扉を開ける仕掛け、なんだろうけど……。青の賞金稼ぎさんはこのピースを集めて、ここに当てはめて進んだのかな」 「たぶん違うと思う」  推論を否定したノエルに視線を落とすと、妹は赤い瞳を謎の仕掛けに向け、目が追う最後の隙間に指をさした。 「ここを見たらわかるよ。これ、嵌め込むんじゃなくて動かすみたい」 「動かす? あ、本当だ。小さな石に溝があるね。つまり、これを動かして絵を完成させたら、この扉が開いたのかな」  スライド式のパズルだったらしい。 「それと、兄さん」 「うん?」  妹が警戒を滲ませた声で告げる。 「ここから先は、本当に危なそう」  ノエルの視線は、今度は扉の向こうへと続いていた。杖に彪を込めていないことですぐに危険が迫っているわけではないのだと判断しつつ同じように目を向ける。扉の先は小さな四角い部屋だ。四方五メートル程度のそこは、左右と正面に次の部屋へと続く通路がある。  そんな部屋の真ん中に、何やら大きなガラクタが落ちていた。金属を複雑に組み合わせた、ただのゴミ。表面の金属板がひしゃげ、内部で複雑に張り巡らされた金属線が断ち斬られ、ブスブスと煙を上げている。  金属を重ね合わせた得体のしれない不要物。普通ならばそう見えるだろう。だが、二人にはその正体がわかった。
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