第一話『戦友との再会』

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「機械……だね」 「うん……」  黒い二つ目のようなものに光はなく、動く様子はないが念のために物体の傍を射撃する。しかし反応はない。ゆっくりと歩み寄り、それが完全に沈黙していることを確認してから安堵してため息を吐く二人。 「ここの警備のために配備されていたのかな」 「そうだろうね。でも、強い一撃で殻の上から配線まで叩き斬られてる。動力源も壊されていそうだ。これを壊したのは青の賞金稼ぎさんだと考えると、相当強いね」  百足(むかで)のような形を模したガラクタ――機械を見下ろして、左の部屋へ入っていく足跡を見る。  機械。それは隕石が降ってくるより以前に存在した技術の結晶の一つだ。五百年も昔にその力は猛威を振るい、非力な人間に代わって建造をなし、膨大な情報を小さな頭脳に押し込め、さらには未来を予測し人々を導く技術力を形と成したものだった。  隕獣が蔓延る現在において、人類の力と言えば彪と収束器と呼ばれる武器のみ。機械という存在を知る者はこの世に多くはいない。収束器という道具が構造を解析し構築、利用が可能なだけでその原理が不明なまま利用されているのも、現在の人類に理解が足りないためだ。過去の機械を操る技術の結晶であることを、理解していないためだった。  そんなものを何故二人が知っているのか。それは、彼らの国が現代において唯一機械の研究、開発に躍起になっているからである。 「でも、これは当たりだよね兄さん。機械兵があるってことは……」 「うん。少なくとも、手掛かりくらいはあるかもしれない」  ずっとずっと旅をし続けて、それでも何の手掛かりも得られなかった探し物に、ようやく近づけるかもしれない。逸(はや)る気を抑えながら二人は足跡の後を追った。  いったいいくつの機械兵がやられていただろうか。行く先々で戦闘痕があり、そこには必ず機械だったガラクタが煙を上げて転がっていた。強い力で表面から切り裂かれたものや、殻の隙間を縫って中の配線や重要部分を潰して行動不能にされたものもある。時々血が床や壁、機械だったものに付着しているが、そのどれもが大した量ではない。クリスとノエルもこのガラクタ達に後れを取る気はないが、先を進んでいる者が余程の手練れだということは嫌でもわかる。
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