第一話『戦友との再会』

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 そして、大きな機械兵のはさみを付属した腕が妙な軋み音を奏でた時、ノエルは叫んでいた。 「危ない!」 「っ」  その声が届いたのか、ローブを纏った人物は僅かに背後を振り返るが、すぐさま視線を前に戻し横へ飛んだ。直後、飛ぶ前までいた場所に右のはさみが突き刺さり素早く閉じる。突き刺された地面がサクリと切れた。  灰色のローブはその腕に飛び乗り機械兵の上へ駆け上がろうとするも、追撃してきた左のはさみに襲われやむを得ず下へと落下して逃げ出していた。身軽に体を捻って着地した後にバックステップで距離を取った様子を見て無謀な戦い方をしようという気はないようだが、危険なことには変わりない。剣を握っているフードの人間が道中の機械兵を倒していたのだとしても、今目の前にいるのは別格だ。あれは人一人でどうこうできるレベルではない。そもそも機械とはそういうものなのだ。  示し合わせたわけでもなくシェーラー兄妹は前へ飛び出しフードを纏った剣士の横に並び立つ。両隣に現れた二人にローブの人物は左右を見るも、何も言おうとはしない。新たな敵影に機械が演算を開始して動きを止めていることを確認しながらクリスが言う。 「貴方の実力は道中で理解しているつもりですが、これは一人で相手にするには厳しすぎます。勝手ながら加勢させてもらいます」 「兄さんは銃、わたしは彪術が使えます。前へ出るのは難しいですけど、補佐は任せてください!」  言うが早いかノエルは詠唱を開始する。彪の高まりを感じたのか機械兵の視覚センサーが妹を注視するが、そんなことを兄が許すはずもない。 「フラッシュバレット!」  機械兵の目に当たる付近に弾丸を放つ。それは機械兵の体に着弾すると激しい閃光を放ち、短い時間だがこの中庭を真っ白に染め上げた。 「敵対行為……確認。迎撃」  肉声ではない声が響く。直後、機械兵の体の全面が開き、無数の銃口を覗かせた。 「っ!?」  両腕のはさみだけが武器だと思い込んでいたクリスは目を見張り、しかしもう一度フラッシュバレットを放つ。こちらの位置を特定できなければ命中率は下がるし、しばらくセンサーもまともに動かなかくなるはずだ。しかし、あろうことか機械兵の目から明かりが消え、センサーからの情報を遮断し閃光をやり過ごしてしまった。
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