第一話『戦友との再会』

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 ズラリと凶悪に並ぶ銃口がクリスを睨みつけ、 「アイスニードル!」  可愛らしい声が凛と轟き、クリスの眼前に地面から突如生えた氷の柱が機械兵の銃口から遮るように直立する。直後、一斉掃射が氷を砕いてしまうが辛くもクリスが被弾することはなかった。攻撃彪術を防御に回してくれなければ今頃クリスは蜂の巣となっていたことだろう。足元に転がる、彪の弾丸ではない金属の塊を踏みつけてクリスは冷や汗を流す。  役割を終えて体の中に収納され、交代とばかりに再び両のはさみが剣士とクリスに襲い掛かる。相当な速さで突き出され命を断ち切ろうとしてくるそれを必死に躱しながら、それでもなんとか隣で同様に躱しているフードの人物を見る。ヒラリヒラリと身軽に動き回り、跳んではしゃがみ、身体を逸らしとやっているが、あまり無駄が感じられない。必要最低限の行動でやり過ごそうとしている印象がある。対してクリスは躱せば躱すほど、追い詰められている感があった。  躱そうとした先へ攻撃の手を伸ばしてくるような錯覚を覚える中、このままではじり貧だと考え、地面に体を投げ出して前へ飛んだ。背中のすぐそばを通りすぎる冷たい何かを感じながら着地し、二挺の銃口をその目へと向ける。 「サウザンドシュート!」  二つのトリガーを強く引く。すると収束器から立て続けに弾丸がほとばしり、二つの赤い目を何度も何度も叩きつけた。狼狽えたように攻撃を中断し後ろへ下がる機械兵。クリスは間断なく弾の続く限り打ち続ける。  やがて、パリンと割れる音がした。 「ライトニング!」  そして追い討ちをかけるようにノエルの杖から電撃が飛び、機械兵を直撃した。  機械を動かしているのは動力機関だが、それが作り出している電気がその体を操っている。言ってしまえば機械のエネルギーだ。  そんな電気で攻撃してしまえばより元気になってしまいそうだが、実はそうはならない。機械とはそもそも緻密で精密な設計の上で成り立っており、身体の端々まで指令とエネルギーを伝える配線には電気を運ぶ上で許容量がある。その限界値を超えてしまえば線は焼き切れ、事実上機械は動かなくなってしまうのだ。  そして電気は金属をよく通る。つまり、硬い殻もライトニングという彪術の前には無意味なのだ。
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