第一話『戦友との再会』

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 武芸者は収束器と彪を使い、怪物達と戦っている。  情報収集をする前に道具の補給を、ということで道具屋で薬草を買うことにする。店主に必要なものを注文し、代金を支払って鞄にしまう妹を見下ろし、それから彼女の腰に提げられたホルスターを見つめた。以前に付けていた赤い色のものではなく、白い革製のホルスターはつい最近になってノエルが作ったものだ。故郷では一般的に使われていたがこの国ではホルスターはあまり普及しておらず、自作する必要があった。 「ん? どうしたの兄さん?」  なんでもないと首を振るクリス。彼は一月ほど前に出会った一人の少年のことを思い出していた。命の恩人であり、短い時間ではあったが仲良くなれた、弟のような少年。ノエルの赤いホルスターを受け取った彼は今頃どうしているだろうか。いつか彼の村へ訪れることができたら、きっと楽しいことになるだろう。  そんなことを考えつつギルドへと向かう。政府に頼めるような内容ではなかったり、急ぎのことだったりする依頼を集め、仕事を望む者に紹介をする、いわば仲介業者のような役割をする団体だ。世界中に存在するギルド支部だが本部はどこにあるのか誰も知らない。ギルドでの仕事をこなし、それに応じたポイントを稼ぎ、必要数に到達するとギルドランクが上がる。そうすることで難易度の高い高額報酬の仕事を受注できるようになるという、実力主義でありながら無茶な仕事を与えないようにするというセーフティも設けられている。ただし、仕事を達成してから報告した場合は自身のランクよりも上の仕事でもしっかり報酬を受け取ることも可能だ。  元々は隕獣を倒す依頼を仲介していたために、ギルドに加入した者は狩人(ハンター)と呼ばれ、彼らが持つギルドメンバーの証であるカードは狩猟の証(ハンターズライセンス)という名が付けられてしまっている。  クリスとノエルは常に一緒に仕事をしているため、ギルドランクは共にD。始まりのFからさほど遠くはないが、もう少しすればCへと変われる。そうすれば仕事の報酬も上がり、旅ももう少し楽になるはずだ。  ギルドに入ると、壁に複数の張り紙があり、その前に数人が立っていた。どの仕事を受けるか悩んでいるのだろう。格好からして彼らもクリス達と同じ旅の武芸者に違いない。
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