第一話『戦友との再会』

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「小さな男の子がギルドランクをガンガン上げてるってもっぱらの噂さ。その子が今この村に来てて、難易度の高い仕事をドンドンこなしてるんだそうだ。登録してまだ長くないのに、もうCランクを取得してるんだってよ。そうだろ?」  受付の女性に男性が少し声を大きくして言うと、女性は頷きながら、しかし笑顔に曇りを見せる。 「ただ……ちょっと異様な雰囲気を纏った子なんですよね。怖いというか、暗いというか」 「? 無口な子なんですか?」  女性の言葉に男の子のことが気にかかり、ノエルは首を傾げる。 「口数が少ないのは事実ですね。ただ、そういうことじゃなくて……心を閉ざしてる、というのが正しいかもしれないです。いつもフードを目深に被って目を合わせようとはしませんし。歳は……そうですね、お二人の間くらいです」  随分と若い男の子らしい。そんな子がどうして、心を閉ざしてギルドの仕事をし続けているのだろうか。兄妹は視線をぶつけて不思議そうな顔をした。  その後、店や食事処、民家を二人で回り聞き込みを続けたが、探し物に関する話は何一つ聞けなかった。集まったのは常にフードを被って俯き気味に歩く、暗い旅人の話ばかり。それとハルベ遺跡が古くから存在する、この地域の過去の遺産であるということ。  宿屋で部屋を借り、集めた情報の整理をするために認(したため)めた手帳を見ながら首を傾げるクリス。 「村の外れにあるハルベ遺跡って場所、隕石が落ちるより前から存在してたみたいだね。それだけ古いものならもしかしたら探し物が、もしくはその手がかりがあるかもしれないかな」  五百年以上前からあるハルベ遺跡。入り口からほど近い場所までは村人達も気軽に出入りをしているが、石の扉が中にあり、その奥へはまだ誰も入ったことがないらしい。この遺跡には様々な仕掛けがあり、侵入者を排除するよう作られており、容易に足を踏み込むことはできないのである。言い伝えでは、はるか昔にこの地を治めていた有力者が力を入れていた研究施設だと言われているが、その真偽はいかほどのものか。 「うーん、青の賞金稼ぎさんって人の邪魔をする気はないけど、一度この遺跡は見ておきたいね。ノエルはどう思う?」  ここで顔を上げ手帳からベッドの上で休んでいる妹に視線を移す。だがノエルは元気のない表情で手元をじっと見ていた。
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