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昨日のあれは何だったんだろうか。
何かを伝えようとしていた様に見えた。
だとしたら一体なにを?
先輩に真剣な目を向けられたあの時、一瞬時が止まって、僕の気持ちが全部見透かされる様な感覚を覚えた。
「涼、今年も夏祭り一緒に行くよな?」
部活が始まる前、練習着に着替えながら涼に尋ねる。
「あぁもちろん。
あっでももう一人呼んでいいか?」
いきなりの提案に怪訝に思う。
涼が特別一緒に行きたいと言う相手なんていただろうか。
「別にいいけど。誰?」
「小橋。連れていけってしつけーんだよ。
なんでも、お前と仲良くなりたいんだと。」
「なんで僕と?」
さぁな、と返してくる涼をよそに、小橋君の事を考える。
うちのクラスのムードメーカである小橋大樹は取り敢えず明るい。
しかも誰に対しても優しいその性格から、親しみやすい奴だ。
でも僕は連絡事項ぐらいの会話しかしたことがないはずだが、なぜ彼が僕なんかと?
彼と夏祭りに行きたい連中なんていっぱいいるだろうに。
「よっしゃ!今日も頑張るぞー。」
部長の一言で練習が始まるが、中宮先輩の姿はない。
相変わらずの遅刻癖に少し呆れる。
そういったとこがルーズなのにも関わらず、なんとなく憎めず許されてしまうのが、中宮海という男なのだ
アップと筋トレが終わったところで、先輩が現れる。
「海!おっせぇよ、お前ー!」
「わり!ちょっと宿題出すのわすれててさ。」
てへっという効果音が付きそうな笑い顔を見てキュンとする。
はぁ、僕は乙女か…
先輩が何かを探すように辺りを見渡し、僕で目を止める。
少しびくっと肩が跳ねる。
僕が居るのを確認した先輩は、こっちにニカッと笑いかけてシューズを履きはじめた。
なんであんなにかっこいいんだ!!
後ろに光が見えた。いや、そんな訳ないけども。
先輩のひとつひとつの仕草がかっこ良くて仕方が無い。
心の中でワーワー騒いでいる僕は、きっと重症なのだろう。
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