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祭りの中心のステージに近づく度に、人が増えて賑わいを見せる。
屋台や太鼓の音は、どうしてこんなにワクワクするのだろうか。
「楓!射的しようぜ、射的!!」
もうすっかり打ち解けた大樹が誘って来る。
喋りやすくて面白い大樹は、話せば話すほどほとんど始めて遊んだとは思えないほどに僕と涼に馴染んでいた。
散々食べたり遊んだりして、すっかり暗くなった頃、そろそろ花火が見やすい所へ移動しようという事になった。
屋台の後ろ側の、少し開けた芝生に行って賑わっている大通りを眺める。
余り人が居ない静かなそこから見る景色はキラキラしていて、まるで映画を見ている様な気分になる。
ドォン!!!
いきなり大きな音が鳴ると、空に大輪の花が咲いた。
わあっと声がして、皆が幻想的なその景色に目を奪われる。
綺麗だけれど儚い花火は、舞っては散り、消えてゆく。
先輩も見ているだろうか。
何処かでこれを見ているだろう中宮先輩のことを思う。
一緒に見れたらきっともっと綺麗だったんだろうな。
そんなことを考えながら、ふと屋台の方に目を向けると、目に飛び込んで来たものに愕然とする。
「な、なんで…」
かすれた声が漏れた。
そこには、今僕が思い浮かべていた愛おしい人。
そして彼の微笑む先には、浴衣姿の彼女の姿があった。
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