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先輩の目が大きく見開かれる。
「先輩に彼女がいるのは分かってます。
だから、返事を返して欲しい訳じゃ無いんです。
男同時でこんなこと言って、すみません。気持ち悪いですよね。」
今まで優しかった先輩の目が嫌悪に染まってしまうのが恐くて、ぎゅっと目を閉じる。
少しの沈黙が、とても長く感じた。
「気持ち悪くないよ。」
ボソッと呟かれた言葉が信じられなくて、パッと顔を上げて中宮先輩を見てしまう。
その目は、嫌悪ではなく、苦しげな色をしていた。
「他の男なら無理だろうけど、何故か楓だったら気持ち悪く無い。
でも、なんで?
だって昨日見たんだろ?
走っていく楓に気付いたんだ。
俺はお前に嘘をついた。
そんなヤツにどうして告白なんてするんだ。」
確かに先輩はお世辞にも真面目で、いい人なんて言えない。
「だから、さっき言ったじゃないですか。」
問うような視線を投げかけてくる先輩に微笑む。
「ただ、先輩が好きで仕方がないからですよ。」
「っ!俺なんか良い所なんて一つもないじゃないか!!」
そう言って言葉を荒げてくる。
「僕は、先輩の性格とか顔とかが良くて好きになったんじゃありません。
いつの間にか、中宮爽という存在に惹かれていた。
先輩嫌だと思っている所も弱い所も、何もかも含めて愛おしい。
だから、あなたが幸せならそれでいいと思ってたんです。」
でも、と続ける。
「正直昨日のは堪えました。
先輩を諦めたらどんなに楽かと思った。
だけど無理だったんです。
嫌おうと思っても、思っても、中宮先輩の笑顔が頭を離れてくれない。
なので、深く考えないで突撃して見る事にしました。」
「え…?」
いきなりばさっと言い捨てた僕に驚いたのか、先輩が唖然とする。
「僕、こう見えてうじうじするの大っ嫌いなんです。
なので、取り敢えずアタックするだけしてみる事にします。
先輩、覚悟しといて下さいね?」
さぁ、ここからが本当のスタートだ。
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