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部活終わり、相変わらず僕に絡んでくる中宮先輩を、何時からか嫌だとは思わなくなっていた。
「楓ーアメ食べたい」
「はぁ…のど飴しかありませんよ?」
「さんきゅー」
ニコッと笑いかけられると心臓がドキドキする。
なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。
「楓が照れてる、かわい」
「…可愛くないです」
最近可愛いとよく言われる。男としては嬉しくないが、中宮先輩に言われるとなぜか嫌な気はしない。
「海ー彼女まってんじゃねーの?」
「あー…はいはい…」
渋々といった様子で腰をあげ、部室を出て行く姿に胸がズキっと痛んだ。
「…?」
「どうかしたか?」
初めて感じた痛みに首を傾げていると、中宮先輩を呼びに来た部長が話しかけてくる。
「いえ、なんでもないです」
「そうか。海も大変だよなー。
あいつ、彼女と上手くいってねぇんだよ。
最近教室でも喧嘩ばっか。
今までで一番続いてんだけどなー。」
「そう、なんですか…」
ここのところ元気が無いように見えたのはそのせいか。
彼女を見たことはある。
可愛い人だった。
でも少し気が強そうな感じ。
他の先輩達が言うには尻に敷かれてるらしい。
いくら喧嘩をしても一緒に帰ると決めているらしい約束を、破った姿はまだ見ていない。
毎日二人が並んで帰るのを見るたびに、もやもやする自分が分からなかった。
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