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その日から、なぜだか中宮先輩がメールで写真を送ってくるようになった。
『どうだ!俺もなかなかうまいだろ?』
何だか負けたく無くて、僕も返信に写真を送る。
『まだまだですね。』
『やっぱうまいなー。でも負けねぇ。(笑)』
そんなくだらないやり取りが嬉しい。
いつの間にか、写真以外の事でもよくメールするようになっていた。
先輩と僕は、学校でのタイプは違ったが、価値観がとても似ていた。
学校で普段見ている先輩は、賑やかで、いつもクラスの中心にいるようなグループにいる。
でも僕と話す時の先輩は、本好きで、静かな夜が好きな、そんな人。
好きな物や、惹かれる物がとても似ていた僕達の会話は尽きる事はなかった。
その頃にはもう僕の中でのあなたへの感情は、ただの先輩後輩の関係には収まりきれなくなっていた。
いつの間にか日課になっていた毎日のメールが、楽しみで楽しみで仕方がなかった。
でも、先輩への気持ちが大きくなるほどに、
直接話す事が気恥ずかしく、上手くいかなくなってしまった。
『今日廊下ですれ違ったとき、視線そらしただろー』
そんなメールが届き焦る。確かに移動教室の時、すれ違った先輩から思いっきり視線をそらしてしまった。
あからさまに不自然な様子の僕に怪訝そうな涼を誤魔化すのが大変だったのだ。
『いや、そらしたっていうか、何て声かけていいのかわかんなくて(笑)』
なんて返したらいいか分からずに、取り敢えず考え付いた言い訳をする。
『こんにちはーって手ぇ振ればいいじゃん』
無理です、と返すと、いつものような日常会話に戻ったメールにホッとした。
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