誤魔化す痛み

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「今日彼女に、もう俺の事ほんとに好きか分かんないって言われた。 最近顔合わす度に喧嘩ばっかだったし、お互い小せぇ事でイライラしてたんだけどさ。 今まで何人かと付き合ってきてこんな続いた事無かったから、今更別れるとか言えなかったし。」 そう言った先輩の話しに疑問を持つ。 「それがどうしていきなりあんな大きな喧嘩になったんですか?」 「あいつ男の家に遊びに行ったんだよ。 友達に誘われてしょうがなかったとか言ってたけど、普通付き合ってる奴がいて男の家行くか!? それで、もう勝手にすればって言ったら喧嘩になった。」 好きか分からない?だったら何で付き合ってるんだ! 怒鳴りたくなる衝動を堪える。 思っても報われない恋もあるのに。 好きな人と付き合えるという事がどれだけ幸運な事か。 「彼女さんも、きっと頭に血がのぼって勢いで言っちゃったんですよ! 中宮先輩も彼女さんの事好きだから嫉妬しちゃったんですよね? ちゃんと話し合ったら仲直り出来ますよ!!」 痛む胸を誤魔化し、声を上げて言う。 彼がそれで励まされるのなら。 「でももう俺、あんな事言われてあいつが好きか分からなくなったんだ。」 「なに弱気になってるんですかー。 そんなの先輩らしくないですよ! 先輩は何時も通り、バカやってればいいんです。」 「失礼な奴だな。」 クスッと少し笑った先輩にホッとする。 「なんか元気出てきたわ。 明日ちゃんと話し合ってみる。」 「はい!じゃあ僕はそろそろ…」 「あぁ、付き合わせて悪かったな。 ありがとう。」 お休みなさい、と電話を切ると涙が頬を伝った。 これで良かったんだ。 そう自分に言い聞かせても、ソレは何故か止まらなかった。
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