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ロビーの隅にある肖像画と、台座...。明るい照明。赤いカーペットも。
どれも全てが懐かしい。
「留弗夫様。どうぞタオルを......」
「おうっ。ありがとよ、源次さん」
「今、タオルをお持ち致します」
「いや、俺は後でいい」
今は、この景色を目に焼き付けておきたい。
源次は、後ろに下がってから一礼すると、すぐさま留弗夫の方へ向き直った。
「悪いが源次さん、皆を呼んで来ちゃくれねえか?“19人目がいた”と伝えれば分かると思うぜ」
「畏まりました」
どうやら、うまくこの《世界》に定着出来たようだ。
“19人目”という、厄介な役をもらいはしたが、それが証拠だと言われてしまえば納得出来る。
いや、そうせざるを得ない。
「源次」
俺は、階段を駆け上がろうとしていた源次を呼び止める。
「はい。何でごさいましょうか」
「あの娘は?金蔵の孫か?」
ロビーの片隅。
肖像画の前で啜り泣く少女が気になった。
源次は、淡々と、その娘が金蔵の孫であり、楼座の娘であることを説明した。
たしか、名前は......真里亞、だったか。
「思い出した。源次、もういいぞ」
「失礼致します」
そう言って、階段を駆け上がって行く源次を見送り、肖像画の前で啜り泣く少女に話しかける。
留弗夫の制止の声は無視した。
銃を持っている奴の目の前で、変なことをする気は無い。
「こんにちは。俺は『森の狼さん』......君の名前は?」
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