第一の晩

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「うー。......ママが、知らない人とお話しちゃいけませんって言った。うー」 「俺は『狼さん』だ。人じゃないから大丈夫。もし、怒られそうになっても、魔法で忘れさせてやるから」 真里亞は、“魔法”という言葉に食いついた。 先程まで、目にいっぱいの涙を溜めていたにも関わらず、今では目を輝かせて見つめてくる。 「狼さん、魔法が使えるの!? じゃあ、じゃあ......ベアトリーチェ知ってる?」 「ああ。黄金と無限の魔女・ベアトリーチェのことだろ?」 「うー!真里亞ね、ベアトリーチェの友達なの!」 言葉だけで表現し切れないらしく、体を使って嬉しそうに飛び跳ねてみせた。 その1つ1つの表現、表情は幼く、そして可愛いらしかった。 ドタドタドタ......! バタバタバタ......! 束の間の癒しの時間は終わりを告げる。 数人の、勢いよく階段を駆け下りる音が、辺りに響きわたった。 「本当なの!?19人目が見つかったってのは......!」 「ああ。今、真里亞ちゃんと遊んでる」 「真里亞!!」 1人の女性が、俺と真里亞の間に割って入る。 キツく睨み付け、警戒しているのが見てとれた。 「真里亞、狼さんとお話してただけだよ。うー......」 「狼さん......?あなた、何者なの」 知らない人と話すな、という約束を破った娘よりも、得体の知れない人物に自然と意識が集中した。 真里亞は、俺が魔法を使ったと思ったようで、再び目を輝かせていた。 さり気なく、唇に指を当てて沈黙を促す。 ハッとした様子で口を両手で塞ぐ仕草は、可愛いらしく、とても癒された。
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