第一の晩

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「そうだぜ!右代宮の人間だ、ってんなら、証拠を見せやがれっ!」 証拠......。 右代宮の人間なら持っている物を出せ、と言っているのだ。 はあ......。 「あるにはあるが、俺が右代宮の誰かの伴侶だったらどうする気だったんだ?」 「......っ!」 「考えてなかった、って顔だな。ほら、これでいいのか?」 俺が差し出したのは右腕。 手首に着けた金のブレスレットと、手の甲に彫られている『片翼の鷲』を見せる。 これだけでも、充分な証拠になる。 正当な右代宮の者でしか持つことを許されない『片翼の鷲』。 いくら右代宮の者の伴侶であろうと、それを身に付けることは出来ないという代物だ。 ただし、例外がある。 金蔵が認めた使用人だけは、『片翼の鷲』を身に付けることが許されている。 今、この場にいる源次のようにだ。 「ところで、今日は何日だ?」 「10月5日でございます」 尋ねられることが分かっていたかのように源次が答えた。 時計は8時を示している。 これだけの人数がいる、ということは、まだ最初の辺りか......。 周囲を見渡し、今、この場にいない者を確認する。 蔵臼、熊沢、郷田、紗音、嘉音、南條。 ......ついでに金蔵。 以上の7名。 「......何かあったのか?」 何気ない質問のつもりだったのだが、親族たちにはそうは思えなかったらしい。 「ふざけンじゃねぇぜ!お前が父さんを......嘉音くんを殺したんだろ!!」
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